
日本語独自の 文頭の字下げ とhtmlの関係について。長年議論されながら明確な答えを持たない問題でもあります。字下げの理由は grammar (グラマー, 文法) ですからその視点を無視せず考える。
日本語で字下げを行う理由
各言語それぞれ特有のgrammarがあるわけで、日本語も当然持っています。特徴的なのは
- 全角である
- 縦書きである
- 段落は最初の一文字を空ける
など。今回のテーマは「字下げ」で、リストで言う③が該当ですね。そして字下げの理由は 段落の最初だから です。この段落というのがひとつのキーポイントかな、と思います。何故なら英語圏には英語圏の段落のルールがあるからです。
英語圏のgrammarの特徴は以下の通り。
- 半角である
- 横書きである
- 段落は インデントか段落間空白かいずれか
英語のgrammarで段落を示すには実は2通りあるんですね。それについては次の章で説明するとして、ここで大事なのは 日本語の字下げは「段落」を示すために行う という点です。
日本語と英語の段落の違い
webの標準語は英語です。 これはもう動かしがたい事実です。英語を基本としているのですから、文章の構成に於いても 英文法を基本としている と考えた方が良いですね。
ここで英語のインデントについてです。前述したように英文法では段落を示す方法が2通りあります。
【インデント】
Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit, sed do eiusmod tempor incididunt ut labore et dolore magna aliqua. Ut enim ad minim veniam, quis nostrud exercitation ullamco laboris nisi ut aliquip ex ea commodo consequat.
Duis aute irure dolor in reprehenderit in voluptate velit esse cillum dolore eu fugiat nulla pariatur. Excepteur sint occaecat cupidatat non proident, sunt in culpa qui officia deserunt mollit anim id est laborum.
【段落間に余白】
Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipiscing elit, sed do eiusmod tempor incididunt ut labore et dolore magna aliqua. Ut enim ad minim veniam, quis nostrud exercitation ullamco laboris nisi ut aliquip ex ea commodo consequat.
Duis aute irure dolor in reprehenderit in voluptate velit esse cillum dolore eu fugiat nulla pariatur. Excepteur sint occaecat cupidatat non proident, sunt in culpa qui officia deserunt mollit anim id est laborum.
インデントの方なんですが、手書き文書の場合日本語の字下げのように「一文字分」という明確なものではなく「約1.5インチ」です。英語は日本語の作文用紙のように一文字づつマスがあるわけではありませんので、「大体このぐらい空ける」といったアバウトな感じに。
inchというのは 絶対単位 です。ところがコンピュータの画面というのは解像度などが存在し、サイズの概念が全く違います。よってコンピュータ上では 相対単位 を用いるのが妥当。しかも「大体1.5inchぐらい」という曖昧なものでは統制が取れないですよね。
ルールが存在する理由自体が 統制 のためなので、web上では「段落間余白」の方をメジャールールとして採用しています。段落のルールは「インデントを行い段落間空白を設けない」か「インデントを行わず段落間空白を設ける」のいずれかなので、段落前後行に空白がある場合にはインデントは用いない、ということです。
では日本語はどうでしょうか。基本が縦書き文化であり、段落は「一字下げ」で表現し、「段落間余白」という概念はありませんよね。そして横書きのルールは 段落が変わるときは「改行」し「一マス」空ける ではないかと思います。
【日本語横書きルール】
私はその人を常に先生と呼んでいた。だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。これは世間を憚る遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。私はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ「先生」といいたくなる。筆を執っても心持は同じ事である。よそよそしい頭文字などはとても使う気にならない。
私が先生と知り合いになったのは鎌倉である。その時私はまだ若々しい書生であった。暑中休暇を利用して海水浴に行った友達からぜひ来いという端書を受け取ったので、私は多少の金を工面して、出掛ける事にした。私は金の工面に二、三日を費やした。
こうですよね。段落が変わっても余白は与えないというルールのはずです。ですから 文頭の字下げを重んじる場合は段落間余白は入れない という考え方になりませんか。字下げにこだわるという場合は「日本語のルールを重んじたい」という理由なのでしょうから、だとしたら段落間に余白を入れるのはおかしな話です。日本語で余白が生じるのは「章」が変わるとき、英語的にはsection (セクション) が変わるとき、ということになりますね。
別に「字下げしたい」という方を批判したり否定するわけではないですよ。素朴な疑問として書いているだけです。
* 文章は 夏目漱石「こころ」より抜粋
ルールの混合は避けるのが基本
英語の論文なんかでも「段落はインデントか上下空白かどちらか」であって両方を使うというのはルール違反。じゃあ英語が基本のwebにあって日本語のルールはどうするのよ、と。そういう問題になってきますね。そもそも全然規則が違うわけなのにどうしたらいいわけ?と。
まぁどうしようもないよね (´・ω・`) ←
各々が「読みやすさ」を重視して仕上げてもらうしか。だって「日本語ルールを遵守して段落を字下げだけで表現しためっちゃ長文のページ」よりも「段落で字下げをしつつ適宜段落間余白のあるめっちゃ長文のページ」の方がたぶん読みやすい。日本語文法的には前者の方がより正しいとしても。
ただ個人的な感覚としてこれは直感的にちょっとおかしい文章だな、と感じます。
①私はその人を常に先生と呼んでいた。だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。これは世間を憚る遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。私はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ「先生」といいたくなる。筆を執っても心持は同じ事である。よそよそしい頭文字などはとても使う気にならない。
②私が先生と知り合いになったのは鎌倉である。その時私はまだ若々しい書生であった。暑中休暇を利用して海水浴に行った友達からぜひ来いという端書を受け取ったので、私は多少の金を工面して、出掛ける事にした。私は金の工面に二、三日を費やした。
③学校の授業が始まるにはまだ大分日数があるので鎌倉におってもよし、帰ってもよいという境遇にいた私は、当分元の宿に留まる覚悟をした。友達は中国のある資産家の息子で金に不自由のない男であったけれども、学校が学校なのと年が年なので、生活の程度は私とそう変りもしなかった。したがって一人ひとりぼっちになった私は別に恰好な宿を探す面倒ももたなかったのである。
①と②と③がそれぞれ段落で3段落なのか、それとも①と②は同じ段落で③が別の段落、合計2段落なのか。ルールの混合が良くないというのはこういう混乱を招くからです。 なので感覚的には
【段落は字下げで表現】
①私はその人を常に先生と呼んでいた。だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。これは世間を憚る遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。私はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ「先生」といいたくなる。筆を執っても心持は同じ事である。よそよそしい頭文字などはとても使う気にならない。
②私が先生と知り合いになったのは鎌倉である。その時私はまだ若々しい書生であった。暑中休暇を利用して海水浴に行った友達からぜひ来いという端書を受け取ったので、私は多少の金を工面して、出掛ける事にした。私は金の工面に二、三日を費やした。
③学校の授業が始まるにはまだ大分日数があるので鎌倉におってもよし、帰ってもよいという境遇にいた私は、当分元の宿に留まる覚悟をした。友達は中国のある資産家の息子で金に不自由のない男であったけれども、学校が学校なのと年が年なので、生活の程度は私とそう変りもしなかった。したがって一人ひとりぼっちになった私は別に恰好な宿を探す面倒ももたなかったのである。
【段落は余白で表現】
①私はその人を常に先生と呼んでいた。だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。これは世間を憚る遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。私はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ「先生」といいたくなる。筆を執っても心持は同じ事である。よそよそしい頭文字などはとても使う気にならない。
②私が先生と知り合いになったのは鎌倉である。その時私はまだ若々しい書生であった。暑中休暇を利用して海水浴に行った友達からぜひ来いという端書を受け取ったので、私は多少の金を工面して、出掛ける事にした。私は金の工面に二、三日を費やした。
③学校の授業が始まるにはまだ大分日数があるので鎌倉におってもよし、帰ってもよいという境遇にいた私は、当分元の宿に留まる覚悟をした。友達は中国のある資産家の息子で金に不自由のない男であったけれども、学校が学校なのと年が年なので、生活の程度は私とそう変りもしなかった。したがって一人ひとりぼっちになった私は別に恰好な宿を探す面倒ももたなかったのである。
【段落は字下げと余白の両方で表現】
①私はその人を常に先生と呼んでいた。だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。これは世間を憚る遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。私はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ「先生」といいたくなる。筆を執っても心持は同じ事である。よそよそしい頭文字などはとても使う気にならない。
②私が先生と知り合いになったのは鎌倉である。その時私はまだ若々しい書生であった。暑中休暇を利用して海水浴に行った友達からぜひ来いという端書を受け取ったので、私は多少の金を工面して、出掛ける事にした。私は金の工面に二、三日を費やした。
③学校の授業が始まるにはまだ大分日数があるので鎌倉におってもよし、帰ってもよいという境遇にいた私は、当分元の宿に留まる覚悟をした。友達は中国のある資産家の息子で金に不自由のない男であったけれども、学校が学校なのと年が年なので、生活の程度は私とそう変りもしなかった。したがって一人ひとりぼっちになった私は別に恰好な宿を探す面倒ももたなかったのである。
この3種なら違和感がないような気がします。3つ目は日本ルールと西洋ルールの混合ですが整然とはしている(笑)
webの段落はp要素
個人的にwebページで字下げにこだわる必要は無いと思っているんですが、こだわってはいけないと思っているわけでもありません。ただ単に「字下げする人なんだな」と思うだけで。それに公文書なんかは横書きでも字下げされてますよね。
なんで「こだわらなくて良い」と思うかという理由は htmlのp要素で段落を表現できるから です。このp要素は「段落を余白で表現する」というのがデフォルトです。htmlというのは「意味論」であって「見た目や装飾」のために用いて良いものではないので、見た目にまつわるものは文法に倣っているだけ。英語のgrammarの「段落だから余白があるよ」を実践しているのがp要素です。

pタグとbrタグについて考えてみる
段落を意味する p というタグと 改行を意味する br というタグ それぞれの使い所や、FC2に於いては「新投稿画面で 改行 を行うと勝手に div で挟まれてしまう 問題(?)」も絡めていきます。...
htmlレベルで段落を定義する際に既に「余白」を持っていますので、ここで敢えて字下げを追加する必要があるかどうかですよね。あくまでも「web上で」という括りつきで。余白があれば直感的に「段落なんだな」という認識ができるんですね。英語話者の場合は。
ところが日本語はそういう文法ではないのでビミョー(笑)
日本人がp要素の使い方が下手(表現が悪くてごめんなさい)だったり、なかなか使い方を理解できないのはこのあたりに原因があるかもしれませんね。改行をやたらに利用したり段落の概念が薄いのも日本語の特性に拠るものだと思ふ。
日本語の特性というのは「段落は字下げ」で表現するけれども横書きに於いては西洋ルールと混合・混在してしまう点(インターネットの急速な発展も一因か)、そして「単語間スペース」の概念が無いため単語の途中でも折り返してしまい可読性が低下する点など。
全角スペースは「文字」です
webページ上で字下げをする日本語話者の方の多くは 全角スペースの入力 でもって行っているのではないかと思います。英語に「全角」というのはありませんので、日本語独自の全角については不可視のスペースであってもそれは「文字」として定義されます。この点も「字下げにこだわらなくて良いじゃない」と私が個人的に思っている理由のひとつです。
webページ上の「見えない文字」というのはあまりよろしくはない。読み上げ機能がおかしくなったり、検索結果にうまく掲載されなかったりするからです。だって「文字」だもの。検索キーワード
「りんご」
のつもりで書いたら字下げしたおかげで
「 りんご」
でないとヒットしないとか。そういうの。
なので段落に字下げを付けたいという方へはCSSの利用をおすすめしたいと思います。
.xxx p { text-indent: 1em; }
.xxx のセレクタ名はテンプレートによって様々なので調べる必要があります。もしかしたら .xxx のクラスセレクタではなく #xxx のアイディーセレクタかもしれません。
こうすれば全角スペースを打たずに済みます。しかしながらこの場合は 旧投稿画面のリアルタイムプレビュー に反映されませんし、新投稿画面のWYSIWYG(デフォルトモード) でも反映されません。そこを我慢できるならおすすめ。そして当然p要素を使える、という方限定。
* ユーザースタイルシートは記事作成時の画面では無効となるためです。プレビューや投稿後には反映されます。
日本語の文法にこだわる方は
.xxx p { margin: 0; text-indent: 1em; }
こうして余白を取ってしまえばよし。見た目を操作したからといって「段落である」という定義は失われません。htmlはそのためにあります。そしてCSSは見た目の操作のため。「html(意味論)とCSS(スタイリング)は完全に分離させるべき」と言われる理由でもあります。
まとめ
Q&Aサイトで「xxサイトでは字下げが勝手に削除されて困る」という質問を度々目にします。これについては、ひとつのwebページ上で各自がそれぞれ独自のルールで文章を書いてしまうと全体的な統制が取れないんですね。ある人は字下げをし、ある人は段落に余白があり、ある人は… となると結局は読む側が混乱します。そのために一定のルールが必要です。
FC2ブログで複数の人間が書ける場所というと「コメント欄」になりますね。そこで字下げをする・しないについては先程述べた通り全角スペースは原則「文字」として扱われますから反映されます。半角スペースの場合は英語圏に文頭半角スペースを入れるgrammarが存在しないのと、データベース保存上のルールため「文頭の半角スペースは削除される」という仕組みです。でも全角の場合はしつこいですが「文字」なんで (´・ω・`)
文字であるはずの全角スペースも削除される、という仕様のサイトの場合は「統制上のルール」だと思ったほうが良いんで、そういう場所で無理に利用すると煙たがられることもあるかもしんない(笑)
無理に使うというのは、大抵は文字参照などを使えば表現できますのでそういう手段でクリアするとかそういう感じ。
念の為ですが個人的にコメント欄で字下げされても何も思いません。したい方はどうぞご自由になさってくださいね。そもそも字下げ反対論者ではありませんし。
あと弊ブログコメント欄で「?や!の後ろにスペース」という話題を頂いたので参考記事として。

感嘆符・疑問符の後に全角空白(スペース)が必要になる理由と、Webメディアの表記ルールについて | 株式会社LIG
「!」といった感嘆符や、「?」のような疑問符のあとに全角空白(スペース/アキ)が必要になる理由と、Webメディアの表記ルールについてまとめました。
文法云々はさておいても個人ルールというのはありますよね。私自身も「絵文字・顔文字を入れたら改行」「文章と絵文字(or 顔文字)の間に半角スペース」「文章が半角カッコで終わるときは句点は打たない」とかマイルールがあります(笑)
全角スペースが文字である、という話が出まして、それにまつわる「これはやってはいけない」というデザイン上の注意がありますので、また次回にでも記事にしようかなと思います。
There are no comments yet.